HOME >> FLE先進事例 >>

  アメリカのFLEとグループワーク
カナダのノーバディズパーフェクト
>> ニュージーランドのコーヒーグループなど
  台湾の家庭教育と韓国の健康家族支援
香港の総合家族サービスセンターと美食科学
フィンランドの子育て支援
  フィンランドのネウボラ
  
 
ニュージーランドのコーヒーグループなど

   (広義の)家族生活教育(のなかの親教育)  
 
 ニュージーランド(以下NZ)では、新生児が生まれると、自治体のからの家庭訪問があり、プランケット協会、保育所、プレイセンターなどの様々な親のため・子どものためのプログラムが紹介されています。
この家庭訪問は、アメリカでも行われており、日本にも導入されていますが、NZの母親たち(父親たち)は、まずこの訪問でその住んでいる場所でこれから育児をしていくときにどこでどのようなサポートが得られるのかという情報をすべて聞くことができるようになっています。

 そのなかで、NZの特徴と思われるものをいくつか紹介します。

 プランケット協会

 松川由紀子著『ニュージーランドの子育てに学ぶ』でも紹介されている通り、1907年、ダニーデンの医師キングによって母親と子どもの健康を促進するための協会が設立され、その際ダニーデン市長が市民をタウンホールに集め、市民の賛同を得たのだそうです。
そこで、協会は市民が寄付・協力する形の社会的活動として位置付けられ、以来100年以上子育て先進国NZの中心的役割を果たし続けてきました。
冒頭の家庭訪問もプランケット教会によるものです。
プランケットナース、ヘルスワーカーと呼ばれるスタッフが、訪問や電話相談を行っています。
このように、我が国であれば行政が行うべきと考えられる仕事を、行う組織があり、そこに市民、行政、民間企業が支援をするというあり方は、おおらかな国民性から生まれるのでしょうか。

 写真は、プランケット教会発行の"THRIVING UNDER 5"(5歳までの成長) 2010 EDITION です。
希望する親たちに無料配布されており、巻末には様々な利用可能な機関が載っています。
そして裏表紙には、以下のメッセージが添えられています。

  新しい赤ちゃんの誕生おめでとうございます。

親になることはとてもエキサイティングな挑戦の続く旅であり、また特別な瞬間の連続ですね。
『5歳までの成長』とプランケットは、そのすべてのステップを援助します。

『5歳までの成長』は、新しい親御さん、ご家族、子どもをケアする人々すべてのために、プランケットによってすぐに役立つ情報源として開発されてきました。

ここは、新生児から5歳までのすべての段階における様々な具体的に役立つアドバイスにあふれています。

『5歳までの子育て』は、多くの家族が抱える疑問に答えること、そしてあなたのお子さんが人生の最初に良いスタートが切れるよう手助けするためにデザインされました。


  コーヒー・グループ

 NZで出産、子育てをしたお母さんたちにインタビューすると、家庭訪問も助かったけど、コーヒー・グループでの母親同士のおしゃべりがとても役に立ったという声がありました。
これについて、Eleanor Black "Confessions of a Coffee Group Dropout -Navigating new motherhood"に詳しく紹介されています。
コーヒー・グループは、主に各地区のプランケットで行われている同月例の子どもを持つ母親たちのミーティングで、子どもを遊ばせながら40分程度一緒にコーヒーとカップケーキなどを食しながら様々なエピソードや悩み事を話し合うというものです。
エレノアが本の中で紹介している友人の中には、競争的なグループになってしまって抜けてしまった、という母親もいたようですが、わたしが聞き取った中では、楽しかったという思い出が語られました。
グループが助け合いながらお互いの子どもの成長を見守りあえるという仕組みはたぶん日本でも実践されていますが、「コーヒー・グループ」という、少し肩の力が抜けたネーミングと穏やかなイメージがNZ全土で共有されているところが素敵ですね。
 


 2000年代の教育制度改革による週20時間無償政策  
 
 NZでは、教育制度改革によって、週に20時間は無料であらゆるプログラムを受けることができるようになっています。この政策は、すべての子どもたちに無償の幼児教育を、ということで労働党政権が行った政策ですが、その背景には、女性の就業率拡大も意図されていたようです。

 NZの保育所にも伺ってインタビューをしていますが、その保育所において、主に臨床心理の専門家を招いたりして「親教育」(有料も無料もある)が行われていました。

 また、この政策によって子どもをいったん保育所に預けた親が、のちに後で紹介するプレイセンターも20時間無償の対象になった時に、またプレイセンターに戻ってきた、というお話も聞きました。
つまり、NZの母親たちはこれらの政策によって緩やかに子どもを預けて働く方向に向かっている一方で、子育ての多様性は切り捨てられることなく認められているようです。 


  プレイセンター
 
 NZの保育の特徴として、よく取り上げられているプレイセンターですが、その中核は親たちがまず自分の子どもやほかの子どもたちと一緒に遊びながら親になることを学んでいく「親教育」のシステムにあります。
プレイセンターについて、現在科学研究費により研究を進めていますので、別に発表をしていきます。
発表以降、このページでもご紹介します。


 学校教育におけるParental Involvement  
 
   カンタベリー大学のガリー博士(Dr. Garry Hornby)によって、学校教育の中で、親をどう巻き込む(Parental Involvement)か、という研究が進められています。
Garry(友人!)は、巻き込むというより、励ます(Encouraging Parents into School)という表現も使っており、いかに学校を通じて教師と親が「タッグ」を組んで子育て・教育をするか、という視点での研究が進んでいるとみていいでしょう。
保育所での親教育の延長に、学校でのParental Involvement =「タッグ」があるように思われます。
しかしながら、まだNZでもメジャーになっているわけではないと言われていました。






2011.9. ラグビーボール状の植木とダニーデン駅 in New Zealand
 
 all rights reserved.copyright (c) 2006 Shouho Masae's Lab