|
では、日本と同じ「儒教」に基づく家族主義からの転換を迫られるアジアの国々の中で、いち早く家族生活教育を制度化した台湾・韓国は、どのような方策によって家族生活教育を行っているのだろうか。
多文化、共働き、社会的弱者による家族問題が噴出してすぐ、危機感が共有され法整備から始まる取り組みがなされてきた。
|
|
台湾における「家族生活教育」 |
|
米国が民間(大学)レベルからの資格化であるのに対し、台湾は政府が主導し、2003年の法律化から始まっている。(台湾では家庭教育と呼んでいる)。
政府は,「家族生活教育」の需要の対象として,大きく分けて3つのグループを措定している。
① 働き家庭
② 社会的弱者グループ(障がい者、少数民族など)
③ 外国籍・大陸の花嫁グループ(全結婚数の三分の一は外国からの花嫁になっている。)
また、「家族生活教育」を大きく2方向において行っている。
|
|
|
■ 学校教育における「FLE」(北欧型?) |
|
|
台湾の家庭教育法における学校教育とテキスト『家庭倫理』
高校以下の学校では、学年ごとに,主要5科目以外4時間以上の家庭教育授業,保護者会を通じた親教育,一般教養課程では家庭教育関連課程を必修科目とするなどとなっている(第12条)。
それらのテキストの編纂は、家庭教育センターが担っており、本報告のもとになる台北県(現新北市政府)家庭教育センター編纂のテキストは、2007年から毎年テーマを設定して小学校用と中・高等学校用が発行されている。
筆者を含むメンバーが訪問した2009年は、『家庭倫理』が出された年であった。
本書は、小学校編と中・高等学校編の2冊に編集されており、3名各1ページの県長(知事)、教育局長、序家庭教育センター主任(センター長)による序文と、全体を指導した大学教授による「家庭倫理在学校」(学校における家庭倫理)という解説の他は12学年、学年ごとに約14~15ページの指導案、配布資料からなる。
冒頭の周錫瑋台北県長による序文「啓動新五倫 経営心家庭」に、このテキストを編集した理念が述べられている。
「この『家庭倫理』課程および活動の参考教材の編集理念は、児童生徒たちに経験の分かち合いと状況についての討論の機会を与え、家庭の中の自分の役割について認知させることである。」
また、「伝統的な『長幼の序有り、兄友弟恭しく』という倫理観念のほかに、自分の思いを表現する方法を学び、コミュニケーションの方法を理解し、家族とともに行動することの大切さを体験し、相互に理解し合い、温かく和やかな家族の雰囲気を醸出することを教える。
」(正保仮訳)
発達段階に即した学年ごとのテーマは、以下のとおりである。
|
◆ |
|
小一 |
|
愛すべき家族 |
|
◆ |
|
小二 |
|
きょうだい団らん |
|
◆ |
|
小三 |
|
隔代(祖父母と孫の)コミュニケーション |
|
◆ |
|
小四 |
|
家族観と家族認識 |
|
◆ |
|
小五 |
|
わが家は最高 |
|
◆ |
|
小六 |
|
コミュニティは大家族 |
|
◆ |
|
中一 |
|
家族の愛は無限(値段がつけられない) |
|
◆ |
|
中二 |
|
あなたも幸せ・私も幸せ |
|
◆ |
|
中三 |
|
暖かい祖父母と私の絆 |
|
◆ |
|
高一 |
|
成長のハッピーソング:親との関係が変わる |
|
◆ |
|
高二 |
|
結婚する日が近づいてきた |
|
◆ |
|
高三 |
|
相手を知り、自分を知れば百戦危うからず |
|
|
|
|
■ センターにおける社会教育の「FLE」(北米型?) |
|
|
以下の図のような重要な位置に家庭教育センターがあり、ボランティア養成を中心として様々なプログラムがあり、家庭のために多面的に活動している。
|
|
韓国における「家族生活教育」 |
|
台湾と同様、社会の変化に対応して2004年に健康家庭基本法・健康家庭支援センターが成立
センターの目標は、以下のとおりである。
|
|
|
◎ |
家族の幸福実現 |
◎ |
家族親和的社会の実現 |
◎ |
仕事と家庭の両立環境創造 |
◎ |
社会的福祉体系の拡大 |
◎ |
家族事業の専門機関確立 |
◎ |
多様な家族の力量強化 |
|
|
|
台湾との大きな違いは、以下の女性政策と連動して動いているところであろうか。
女性家族政策
|
|
|
◎ |
女性政策推進・力量強化 |
◎ |
政策過程への女性の関与増大 |
◎ |
女性の社会参加拡大支援 |
◎ |
ケアの社会化 |
◎ |
女性福祉と人権保護 |
◎ |
健康な家庭の実現 |
◎ |
女幸プロジェクト推進 |
|
|
|
健康家庭支援センターの事業は以下の図のとおりである。
|
|
|
倉元綾子さんHP http://kuramotto.fem.jp/index.html 参照 |
|