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家庭科の脱ジェンダー化と「家庭生活を大切にする心情」
福山市小学校教員の認知とニーズ


 文部科学省は、2008年の 『 小学校指導要領解説 』改訂の主要な点である
「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」に関して、解説において

「 家庭生活への関心を高め、衣食住を中心とした生活の営みを大切にしようとする意欲や態度をはぐくむことである。 」

として、具体的に
家庭生活の基盤には、家族などの 「 人 」、衣服や食物などの 「 もの 」、「 時間 」、「 金銭 」などの要素や、それらが関連し合って家族との関係や生活行為などがあることを、衣食住などの関する自立の基礎に必要な知識及び技能を身に付ける学習を通して気づくようにする。

そうした気づきを通して、日々、繰り返し営まれる家族生活の中で家族とともに自分が成長していることを自覚し、衣食住を中心とした生活の営みを大切にしようとする意欲や態度をはぐくむようにする。

と記しています。

 ところで、今回の焦点となっている 「家庭生活を大切にする心情」を教えていこうとするとき、具体的に 「心情」なるものを教えていく適切な方法があるのでしょうか。

 「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」教育方法を、我が国の家庭科教育・家政学の歴史の中から、とくに1960年代後半の言説にスポットを当て、雑誌 『 家庭科教育 』で取り上げられた具体的な事例について再検討してみました。

具体的には、
@ 1960年代後半の言説を再検討することの歴史的意義。
A その時代において、「 家庭生活を大切にする心情 」に繋がるどのような言説があったのか。
B 家族生活教育として保育の授業はどのように行われていたのか。
C 女子のみを対象とした言説 ・授業であったという限界を超えて、現代の家庭科教育が要請されている 「 家庭生活を大切にする心情 」としてどのように蘇らせることができるか。
を検討しました。

 歴史的言説研究として、1960年代後半の雑誌 『 家庭科教育 』を資料とし、その言説の背景と歴史的意義の検討、言説の分析と解釈、再検討を中心にして、現代にどうつなぐかを考察します。
残念ながら現在は休刊となっているこの雑誌には、家庭科教師や家庭科教育学研究者、家庭科教育に関心を持つ指揮者など、様々な立場の人々の意見が寄せられており、いわばフォーラムのような性格がありましたが、なかでも具体的な授業の展開が載せられていることは、こうして歴史の中から学ぼうとするものにとっては、貴重な資料の宝庫となっています。

 なぜ、1960年代後半に注目するのかといえば、1970年代からのジェンダー規範の変容を前に、大きな価値観の転換期を迎え、 「家庭生活を大切にする心情」につながる言説が増加した時期であるとともに、女子向きという限界はありますが、充実した家族生活教育 ( おもには保育 )が行われていたと認められるからです。

1) 当時の家族生活教育に関わる家庭科の授業は、どのようなものであったのか、以下のようにまとめられます。
 
情熱的な家庭科教師は、地域の事情に応じた、また自分の子どもを教材にしてまでもの
「 教材作り 」を行っていた。
主に夏休み、冬休みを使っての家庭での実体験を記述させたり、体験させたりしていた。
今よりも私秘性が重視されていないため、親類や近所の乳幼児を観察させたりしており、具体的な事例に基づいた授業ができていた。

2) また、家庭科教育で具体的に教えられていたものは何であり、この40年間の間に失ったものは何か、という点で、次のことが言えるのではないかと思います。
 
当時の家庭科教育の主要な柱は、家庭への価値、自分で家庭を経営していく主体性、様々な家庭技術であった。
40年で失ったものは、とくに家庭への価値である。
それと、学歴偏重、女性の社会進出による家庭 (科)の価値観の低下による家庭科教師の自信。
これが極めて大きいように思われる。
家庭科教師たちは、家庭への価値を教えることを禁欲し、その結果、「キュウリを1分間に何枚薄切りで切ることができるか」という 「技術検定」を試験に課して教えるというような、残念なアイデンティティにすがるようになっていったのではないか。

3) そして、「家庭生活を大切にする心情」が問いかけるものは、何かについて、次のように考えます。
 
新しい指導要領における、「 家庭生活を大切にする心情 」の銘記は、家庭科教育史的視点に立つと、計り知れない深さがあると思われる。
その具体的内容は、ゲマインシャフト的内容である 「 家庭生活を大切にする心情 」は、学歴社会と女性の労働力化、もう一つ家族の私秘化という三つの波を被る以前の家庭科教育においては、実はゲマインシャフト的な教材づくりの仕掛けのなかで 「 自然に 」教えられていたことが分かる。
今回、現代の学校というゲゼルシャフト的な空間において、「 家庭生活を大切にする心情 」を教えるとすれば、学校現場も含めた社会全体のゲマインシャフト的な価値の復興を前提にする必要があるのではないか。
ストップウオッチを片手に 「 キュウリを1分で何枚スライスできるか 」的な家庭技術を教えることが家庭科であると信じて生きていた多くの家庭科教師たちを 「 技術 」の束縛から解放し、自信を取り戻すことができる再教育によって、ワーク ・ライフ ・バランスと家庭の価値を理解し、家族生活教育を教えることの意味を問うことが必要である。( もちろん、言うまでもないがシングルで生きるという場合の家庭の価値も含めてである。)
これらのことは、とりもなおさず生活者であること、親であること、ケアを受ける人であり授ける人であること、人間であることを前面に出して、社会や企業がそのために動いていくような社会の仕組みづくりをしていくことと同義であると考える。
さらにいえば、これは我が国の現状からいえば、男女の 「 生活革命 」ともいえる事態のなかで可能となるであろうと思われる。


詳しくは、福山市立女子短期大学研究教育公開センター 年報6号 正保正惠
「 1960年代 『 家庭科教育 』にみる家族生活教育と方法の再検討
 ― 新指導要領主要点 「 家庭生活を大切にする心情 」をどう育むか ― 」
にまとめています。


















2008.7 in Switzerland (スイス・ルツェルン国際家政学会会場近くにて)
 
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家庭科の脱ジェンダー化と「家庭生活を大切にする心情」

      
福山市小学校教員の認知とニーズ


家庭科教育で「家庭生活を大切にする心情」を育む方法についての実態・認知・ニーズ
― 福山市小学校教員に対するアンケート結果 ―

 1.アンケート調査の概要

小学校家庭科の今回の改訂の主な改訂点とされた、
@ 家庭生活を大切にする心情をはぐくむ、
A 家族や家庭の役割の理解、
B 幼児との触れ合い体験を進める
上で、その具体的な教育方法として、「実践・体験」と「ロールプレイング」を検討するため、福山市の小学校5,6年生の教員を対象に、現行の「家庭生活と家族」からの移行に関連して、その方法の実態、認知、ニーズについてのアンケートを実施し、その結果を分析しました。

具体的には、
(1) 現行指導要領における家庭科の「家庭生活と家族」の内容について、
(2) 新しい指導要領について、
(3) 教員養成における家庭科教育について教育方法
という視点から実態・認知・ニーズについて尋ねています。

アンケートの概要は、以下のとおりです。
配布時期 2009年8月
配布数 教育委員会より、メールによる一斉配信で各小学校に送り、5,6年生の担任の先生方に届くよう依頼したので、配布総数は福山市の5,6年生の担任数である306名とする。
回収数 メール添付あるいはクルクル便による送付72件
(担当者全員で1通に回答していただいたものも1件と数えた。)
回収率 23.5% (※1)
内   訳 男性52件、女性20件(女性のなかに両方に○があったもの1件を含む)
20代 9件、30代 17件、40代 23件、50代 23件
(※1) この回収率は、結果の分析をする際に、テーマについて関心の深い教員だけが回答をしている可能性が高いことを踏まえて検討をしていく必要があります。
しかしながら、同じ福山市の機関ということで、アンケートにご協力いただけたことは、この種の調査の実施自体が困難な昨今においては、有り難いことです。
ただ、検定をして分析をしていくというには、数が少なく、回収率も低いため、傾向をみていくという分析にとどめております。



 2.現行指導要領における家庭科の「家庭生活と家族」の内容
   2−1. 「家庭生活と家族」時間数の割合  
 
現行の指導要領において、「家庭生活と家族」は、8本の柱のうちの一つとなっており、新しい指導要領の4つの柱のうちの一つよりは、相対的にヴォリュームが小さなものとなっています。

その中の小単元として、
ア 家庭の仕事、
イ 自分の仕事の工夫、
ウ 生活時間と家族への協力、
エ 家族との触れ合いや団らん、

という4つの項目が設定されています。

今回のアンケートでは、まず、以下のような質問をしています。
あなたは、現行指導要領における家庭科の「家庭生活と家族」について、全体のうち、割いている時間数は何パーセントくらいですか。

1.〜9% 2.10〜19% 3.20〜29% 4.30〜39% 5.40〜49% 6.50%〜
 


 「家庭生活と家族」時間数の割合
   
 
図1 ( 全体 ) 図2 ( 男女別 ) 図3 ( 年代別 )

図1に示したように、回答者は、全体の24.5%であり、関心の高い教員のみが答えている可能性が高いという前提のうえで、8本の柱を均等に教えたと仮定すると12.5%ですが、回答はそれよりも多いと答える教員が圧倒的に多くなっています。
伝統的な家庭科の食や衣生活ではなく、「家庭生活と家族」に対する関心やニーズが高まってきているととらえ、新しい指導要領におけるヴォリュームの増加は必然性があると解釈できるのではないかと思われます。

これらの回答を男女別で比較してみると、図2のように、男性教員の方が「家庭生活と家族」に多くの時間を割いていることがわかります。

また、年代別にみると、図3のように、若い世代の教員の方が「家庭生活と家族」に多くの時間を割いているようです。
これらのことを勘案すると、男性教員の方が、また若い教員の方がより「家庭生活と家族」に対する課題意識があり、従来の家庭科にとらわれていないと解釈することができます。

次に、「上の質問で「1.〜9%」と答えた先生方にお聞きします。その理由は何でしょうか。」という質問を設定していましたが、9%以下という回答そのものがなかったため、理由も回答がありませんでした。

 

 2−2. 「家庭生活と家族」のなかで重視する具体的内容

次に、以下の質問をしています。
「家庭生活と家族」で、最も重要視して教えている領域は何ですか。
○をつけてその具体的な内容を記してください。


1.家庭の仕事 2.自分の仕事と工夫 3.生活時間と家族への協力
4.家族との触れ合いや団らん 5.その他


「家庭生活と家族」重要視の領域
   
 
図4 ( 全体 ) 図5 ( 男女別 ) 図6 ( 年代別 )

まず、どの領域が選ばれているかについて図4に示します。
ここでは、「生活時間と家族への協力」が最も多く、42%となっており、次いで「自分の仕事と工夫」の33%が続いています。

具体的な内容としては、「生活時間と家族への協力」においては、「1日の生活をふり返り、自分のできることを工夫して行う」や、「生活時間を見直し家族の一員として家庭生活のためにできる仕事、時間を工夫する」など、時間の使い方を工夫することで、家庭生活や家族に目を向けるような取り組みとなっています。
また、「自分の仕事と工夫」においては、「家庭における役割と自分にできる仕事」、「自分ができる仕事を工夫して行い、反省することを繰り返した」、「1年間を通して家族のためにできる仕事を決めてさせている」という記述があり、総体的に主体的に家庭での仕事を引き受けていくことを促しています。

図5にみるように、重要視する内容について、男女別では、男性に「自分の仕事と工夫」の割合が多いのに対して、女性では「家庭の仕事」を重視しているという結果が得られ、女性教員にやや家事を家庭責任としてとらえる傾向が伺えました。
また、図6に見るように、年代別では、ばらつきがあり、30代で「自分の仕事と工夫」に重点が置かれていました。

 2−3.「ロールプレイング」という指導方法の使用実態

中学校の新指導要領には、その内容の取扱いにおいて、「A 家族と子どもの成長」で「実習や観察」、「ロールプレイング」などの学習活動を中心とするよう留意することが書かれていますが、小学校においては方法についての記述がありません。
しかしながら、新しい指導要領で強調されている「家庭生活を大切にする心情」を教えるには、具体的な方法論が欠かせません。

そこで、現在の指導要領において、他の教科も含めて、教育方法としてどれくらい「ロールプレイング」が用いられているのか、次のように尋ねています。
他の教科も含めて、「ロールプレイング」という指導方法を使われたことがあるか、教えてください。

1.使ったことがある ( a.家庭科で b.その他で )
   → 具体的にどのような場面で、どう使いましたか
2.使ったことはない


「ロールプレイング」という指導方法の使用実態
   
 
図7 ( 全体 ) 図8 ( 男女別 ) 図9 ( 年代別 )

結果は、図7のように、使ったことがある教員が64%と、小学校でも実際には多く使われているということがわかりました。
教員の性別、年代別についてもほぼ同様の傾向がありました。
どの教科で使用しているかについては、圧倒的に「道徳」が多く、ついで「国語」、「学級会」、「総合的な学習」、「特別活動」が挙げられていました。
さらに具体的な使用場面については、「授業の中で、人の気持ちをより深く考えさせるため」という記述が目立ち、今回改訂の特徴である「家庭生活を大切にする心情」を教える場面においても、小学校であれば同じ教員が関わるので、「ロールプレイング」を使っていくことも難しくないことが分かりました。

また、図8図9にみるように、男女別ではあまり差が見られず、年代別では、40歳代の教員が比較的よく使っていることが分かりました。
これは、教育の世界においてもある種の「流行」があり、方法をよく学んだ時期に「流行」したものをよく身につけているのではないかという予想ができます。



 2−4.「ロールプレイング」という指導方法の効果の認知

次に、「ロールプレイング」の効果の認知について、次のように質問をしています。
使ったことがあると答えた先生に伺います。
その時に「ロールプレイング」という指導方法は、効果的でしたか。


1.効果的だったと思う 2.やや効果的だったと思う 3.あまり効果的ではなかった
4.効果はなかった 5.わからない 6.その他


「ロールプレイング」効果認知
   
 
図10 ( 全体 ) 図11 ( 男女別 ) 図12 ( 年代別 )

結果は、図10にあるように、「効果的だった」と「やや効果的だった」で100%となり、使用したすべての教員がほぼ効果を認めているということがいえます。
ただ、使っていない教員が1/3に上り、これらの教員が「ロールプレイング」に対してどのように感じているのか、使ったことがある教員との間に何か大きなかい離が存在している可能性があると思われますが、この質問内容からはわからないのが残念でした。

男女別では図11のようにやや女性の方が効果的と答え、年代別では図12のとおり、やや50代が効果的と答えている傾向がありました。
これは、「ロールプレイング」という技法に、日頃のコミュニケーションの多寡が関わっており、それを女性や年長者が得意としているからと解釈ができます。



 2−5.「実践・体験」という指導方法の使用実態

次に、同じく中学校指導要領では家族を教える方法として具体的に挙げられている「実践・体験」という指導方法についても、同様の質問をしています。
他の教科も含めて、「実践・体験」という指導方法を使われたことがあるか、教えてください。

1.使ったことがある ( a.家庭科で b.その他で )
   → 具体的にどのような場面で、どう使いましたか
2.使ったことはない


「実践・体験」という指導方法の使用実態
   
図13 ( 全体 ) 図14 ( 男女別 ) 図15 ( 年代別 )

図13のとおり、8割の教員が使用しており、「ロールプレイング」に比べると、多く使われていることが分かりました。
これは、後述しますが、「生活科」や「総合的学習の時間」で通常的に取り組んでいることによります。

男女別では、図14のように「ロールプレイング」よりは傾向がはっきりあり、男性がよく使っていることがうかがえ、年代別では、図15のように20代、30代の教員が比較的よく使っています。
これも最近の教育学の流れを学んだ層が使っている傾向があるといえるかもしれません。

実際に使っている教科は、「総合的な学習の時間」が圧倒的に多く、そのほかでは「生活科」「理科」「社会」が続きます。



 2−6. 「実践・体験」という指導方法の効果の認知 】

次に、「実践・体験」の効果の認知ですが、次のように質問をしています。
使ったことがあると答えた先生に伺います。
その時に「実践・体験」という指導方法は、効果的でしたか。

 
1.効果的だったと思う 2.やや効果的だったと思う 3.あまり効果的ではなかった
4.効果はなかった 5.わからない 6.その他


「実践・体験」効果認知
   
 
図16 ( 全体 ) 図17 ( 男女別 ) 図18 ( 年代別 )

結果は、図16にあるように、「ロールプレイング」とは違う傾向にあることが読み取れます。
「効果的」「やや効果的」を合わせると「ロールプレイング」同様にほぼ100%となるものの、はっきりと「効果的」と答える教員が8割となっており、「実践・体験」という指導方法の方が、評価が高いことがわかります。

男女別では、図17にあるように、女性に評価が高く、年代別では、図18にあるように、50代で高い効果認知をもっているものの20代では少しその効果に対して懐疑的となっていることがわかります。
これは、経験の浅さによる「力量」が関わっているのか、あるいは効果に対する期待値がより高いものとなっているのか、ここでは推測するにとどめます。


 3.新指導要領における家庭科の「家庭生活と家族」の内容
   3−1. 「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」を教える準備  
 
前報で詳細にその位置づけについて検討した新しい指導要領で注目される「家庭生活を大切にする心情」について、福山市の教員はどのように感じているのか、質問をしています。
家庭科の新しい指導要領において、「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」ことが規定されましたが、平成23年度から教える準備について、どう思われますか。

1.準備は万端であり、自信がある
2.準備はほぼ整っている
3. やや不安があり、
内容や方法について知りたい
4. とても不安であり、
内容や方法を改めて学びたい
5.その他
 


「家庭生活を大切にする心情」を教える準備
   
 
図19 ( 全体 ) 図20 ( 男女別 ) 図21 ( 年代別 )

結果は図19にあるように、「準備はほぼ整っている」教員が22%であるのに対して、「やや不安があり、内容や方法について知りたい」と、「とても不安であり、内容や方法を改めて学びたい」を合わせると、74%に上ることが分かりました。

男女別においては、図20にあるように、やや女性教員が不安を感じている傾向があり、年代別においては、20代が全員不安を抱えているという結果となっており、自分自身の家族の経験が定位家族(生まれた家族)のみで、経験のないこと(心情)を教えていくことへの不安がこの結果につながっているのではないかと思われます。
「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」という課題を、特に若い教員に分かりやすく内容や方法を伝える必要があるのではないでしょうか。



 3−2. 「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむための「ロールプレイング」効果予測

次に、「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむために、中学校では方法として挙げられている「ロールプレイング」についてその将来性について聞いています。
家庭科で「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむのに「ロールプレイング」は効果的であると思いますか。

1.効果的だと思う 2.やや効果的だと思う 3.あまり効果的ではない
4.効果は期待できない 5.わからない 6.その他


「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ「ロールプレイング」効果予測
   
 
図22 ( 全体 ) 図23 ( 男女別 ) 図24 ( 年代別 )

結果は、図22にあるように、意見は分かれるところですが、「効果的」と「やや効果的」をあわせると、約6割に上っています。
男女別では男性で意見が分かれ、年代別では20代が「効果的」がないという答えがありました。



 3−3. 「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむための「実践・体験」効果予測

次に、「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむために、同じく中学校での方法として挙がっている「実践・体験」についてその将来性を聞いています。
家庭科で「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむのに「実践・体験」は効果的であると思いますか。

1.効果的だと思う 2.やや効果的だと思う 3.あまり効果的ではない
4.効果は期待できない 5.わからない 6.その他


「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ「実践・体験」効果予測
   
 
図25 ( 全体 ) 図26 ( 男女別 ) 図27 ( 年代別 )

結果は、「ロールプレイング」と比較すると、「効果的」と「やや効果的」を足した割合が多くなっています。
合わせて75%がその効果を予測できるようです。
さらに、男女別では、図26のように男性の方が「効果的」の割合が高く、年代別では、図27のように、20代において「効果は期待できない」という意見が見られました。

 3−4.「ロールプレイング」のメリット・デメリット、「実践・体験」のメリット・デメリット

次に、「ロールプレイング」のメリットとデメリット、「実践・体験」のメリット・デメリットについて、自由記述をいただいているものを検討してみたいと思います。
そのすべての意見は、表1〜4のとおりです。

表1 「ロールプレイング」のメリット
   

児童にとって 気持ちを
感じる
家族のそれぞれの心情を感じることができる
いろんな人の立場にたてる
家庭生活の役割を味あわせるのによい
心情に入りやすい
個々の子どもに実感がともなう
気持ちによりそうことができる
心情を想像しやすい
実際にそれぞれの役割を演じることで、その時の気持ちなどを主観的に捉えることができる
ロールプレイングをすることで、その心情に迫ることができる
異なる立場に立つことで相手の気持ちを察することができる
実感を伴って学習できる
それぞれの立場による感情の動きを感じとることができる
暮らしに
つながる
実際のくらしにつながる
実践への意欲がもてる
自分の家族の中での役割に気付くことができる
ロールプレイングをする事が、実践意欲につながる一つの方法だと思う
自分の行動が相手にどのように思われているのか、シェアリングを通して知ることができる
 → 実践への意欲につながる
家族の役割分担をすることで、父母・祖父母の言葉かけや行動を振り返り、家族の愛情に気づく
実生活につながりやすいと思う
家族の気持ちを考えて、日々の生活を見直すことができる
よりよい
モデル ・価値
よりよい家庭生活を目にし共有できる
それぞれの立場で家庭生活の意味や家事の価値を考えることができる
友達の考えを聞いて学び合うことができる
望ましい家庭生活とはどういうものか理解することができる
理解する
ロールプレイングにより、心情を深く理解することができる
家庭生活ではなかなかふり返らせることができにくいことでもふり返らせることができる
家族の気持ちや自分の気持ちを理解するのに役立つ
家族の別の人の立場になり、その人の心情を理解することができると考える
擬似体験的な活動をすることで、心情が理解しやすい子もいる
家族の思いがわかる
相手の立場を理解しやすい
してみることで家族の一員の立場や考えを理解できる
相手の立場
を考える
その人物になった時の気持ちを考えることができる
その立場に立って考えやすい
相手の立場に立って考えることができる
そのときの家族の気持ちについて深く考えられる
相手の立場を考えることができる
相手の立場を考えられる
相手の立場を考えることにつながる
相手の立場を考えることができる
今まで考えたこともない家族の立場になり、考えることにより、家族の気持ちを考え互いに大切にしようとする態度を育てる
家族の立場に立って考えることで、家族の果たしている役割を意識できる
家族を意識することで、自分にできることをしようとしたり、家族を大事にしようと思ったりする
お互いの立場に立って考えることができる
体験する
役割分担などを実際に近い状態で体験させることができる
擬似体験ができる
体験活動をすることによってより理解を助ける
色々な見方
その立場に立って思いを述べることができる
「ロールプレイング」でいろいろな考え方が獲得できる
教師にとって  授業改善
言語活動の一環にもなること
授業形態が変わり、メリハリがつく
概念指導になりがちな家庭科の授業改善につながる
わからない
よくわからない
わからない
やったことがなく、具体的な場面が浮かばない、よって、わからない


表2 「ロールプレイング」のデメリット
   

児童にとって 遊び半分に
なる
遊び感覚になってしまう
遊び半分になってしまうことがある
児童によっては、適さない時もある(茶化してしまう子もいる)
恥ずかしがる
6年生になると照れや恥ずかしいという感情もあり、真面目にやりにくい子もいる
恥ずかしがる子がいる
高学年では、ロールプレイングのようなやり方は恥ずかしがってなかなか成立しないことが多い
児童や集団によっては恥ずかしがってうまくできない
高学年のため、恥ずかしさがあるのではないか
高学年になると、全体的にロールプレイングに積極的になりにくい(その年度やタイミングにもよるが)
高学年では、やり方によっては子どもが嫌がったり、恥ずかしがったりする
高学年だと恥ずかしがって本当の気持ちを表しにくい
恥ずかしいからしないという児童がいる
全員の児童にやらせるには時間がかかる
児童に
わからない
他の人の立場をわかっていない子が多い
想像にすぎず(大人の思い)、しっかり心情がおさえられないのではないか
親の気持ち、家族の気持ちが十分に理解しにくい
逆に「この仕事はお母さんがすればいい」など、押し付けを生む
 児童と家庭に
とって
家庭間の差 
様々な家庭生活の中で、具体的な思いが表現できない
家庭生活があまりに違いすぎて理解できないこともある
子どもが表現するので個人の生活にふれすぎるかも
家庭環境が様々であり、児童の心情を考える時、ふさわしくない場面も考えられる
それぞれの家庭の状況が違い、プライバシーに触れる恐れがある
家庭事情を配慮しなければならない
デメリットとは言えないが、家庭の在り様が多様化しているため、さまざまな観点から配慮しなければいけない児童が多く、内容的な深まりと広がりが生まれにくい
家庭環境が複雑な場合、特別な配慮が必要
児童によって家族構成や家庭生活の形態が異なるため、事例が一様にはいかない。また、そのことによる子どもへの心理的な弊害
家庭科ですることについては、各家庭の事情を考慮すると難しい点がある
個人個人で家庭の中が違うので寂しい思いをする子もいると思う
児童の家庭生活が反映してしまう可能性がある
学級づくりのできていないクラスでは、私的なことをオープンにすることにより、ストレスを感じる子がいるので、配慮がいる
教師にとって    表面的になる
表面的な取り組みになるだけかもしれない
実際の場での実践に結びつくかやや不安はある
「ごっこ」に終わって意識づけができにくい
表面的な学習に終わる可能性がある
場に応じたものでないと逆効果になる
場に応じたロールプレイングでないと逆効果になる
場に応じたロールプレイングでないと逆効果ではないか
高学年になると本音が出しにくいので、ロールプレイングはきれいごとになりやすい
時間不足
時間の確保
時間がかかる
時間的な問題
準備に時間がかかる
 手法困難
ロールプレイングが成立するには学級づくり、場面設定がきちんとできていなければならないため、手法として難しい可能性がある
よほどしっかり仕組まないと、オープンエンドになり、目当てが達成できにくい場合があるのではないか
 よく
わからない
よくわからない
「家庭生活を大切にする心情」を育むロールプレイングの具体がわからないので答えられない
わからない
どう実践に結びつけていくか明確にできていない
やったことがなく、具体的な場面が浮かばない、よって、わからない
家庭科にロールプレイングを導入するにあたっての具体的な指導方法がわからない
その他
自分の知識の範囲でしか想像できないので情報を収集しておくことがポイントとなる
評価が難しい


表3 「実践・体験」のメリット
   
  
児童にとって     実感できる
家族のそれぞれの仕事の大変さを実感できる
家庭生活の役割を味あわせるのによい
実践、体験することで実感できることがあると思う
言葉だけでは理解できないことも、体験することで感じられるものもある
実感を伴って学習できる
実際に体験することにより、体を通して学ぶことができる
実際に家庭の中で体験することで、実感を伴って理解できる
実践・体験することで大切さが身体を通して感じられる
家庭生活の大切さ、家族への感謝を実感できる
体験を通して理解できる・発見できる・感動、感情がある
触れる、聴く、味わうことを通した、直接体験や情報の収集、製作調理など実感を伴った理解や具体的な学習ができる
実際の生活に
つながる・
生かされる
実際のくらしにつながり易くなる
学校での学習と実践・体験が結びついて相乗効果が期待できる
実生活にすぐ実践しようとする子が多くなると思う
実践意欲につながる一つの方法として有効である
学習、体験内容(調理、掃除、洗濯など)が家庭の中で日常的に生かされていく
家庭科で学習したことが家庭でも生かされて相互によい教材となる
家庭で実践できるようになる
実践・体験をすることにより、生活の中で生かすことのできる実践力が育つ。また、普段何気なく行っている家庭生活の重要性に気づける
技能の向上
活用できる
実践や体験をすることで何をしたらいいか見つけられる
実生活に直接結びつく
家族の大変さを身をもって分かれば、自分も少しは何かしようという気持ちになる
理解
実践することにより、仕事の内容や手順が理解できる
体験して初めてわかる
実際に体験して家庭の仕事や役割を理解することができる
実際にやってみることで「分かる」、「考えようとする」ということは有効である
家族の一員としての自覚をもつことができる
どんな活動でも、自分で体験することでその意味をとらえ直したり、家族の思いを理解したりすることができる
 家庭のあり方
よりよい家庭生活を目にし共有できる
あらためて家庭のあり方を理解できる
「自分にとって」「家族にとって」「社会にとって」価値を考えられる
家庭生活の大切さ、ありかたがわかる
実践・体験を通してこそ家庭生活を大切にすることの良さに気づいたり、家庭生活への関心を高めることができる
豊かな心 
実際場面での具体的な実践方法を学ぶことができるとともに、人とのかかわりを通して豊かな心を育むことができると思う
児童にとって体験するとよりわかりやすく、身のまわりのことに目をむけることができる
生活を
見つめなおす
家庭生活で実際に学習をさせることで自分の生活を見つめ直すきっかけとなる
実際に体験することで,児童自身がいろいろなことに気づくことができる
児童が意欲を持って取り組むことができる
 その他
今までやっていなかったことにチャレンジすることは、子どもにとっても家族にとっても、とてもよい
実体験を伴うことは、今の子どもたちにとても必要不可欠なものだと思われる
子どもにとって実践・体験することで楽しく活動することができる
 児童と家庭に
とって
家族との
交流増加
学んだことを実践・体験することで家族の一員としての自分を考えることができる
家族との対話で心が育つ
体験活動をすることによってより理解を助ける
家で実践した場合、家族とのコミュニケーションの糸口にもなる
保護者と子どもの関わりが実践することでもてるようになる(高学年になるとなかなか話をする機会もないというケースもあるので)
実際に家庭の仕事をしたり、話をすることにより家族を大切にする気持ちが深まる
家庭で実践することにより、家族との絆が深まり、自分の成長を自覚し、家族の大切さに気づくことができる
家庭で実践・体験をし、保護者に感想をもらうことで、自分の役割と家族の喜びを実感できる
学校で学んだことを実際に家庭で実践すると家族に喜ばれたり励ましの言葉をもらったりする。その様な中で「家庭生活を大切にする心情」がはぐくまれると考える
家庭科で学んだことを家庭で実践することにより保護者のかかわりが増え、これからの意欲にもつながる
近年は、家において児童の存在が軽んじられたり、役割がなく、存在感を感じられない場合が想定される子どもたちにとっては必要である
家庭の力が弱い児童にも体験させてやることができる
教師にとって    その他
言語活動の一環にもなること
視点を持たせて実際に行い、多くの気づきを振り返り交流しあうことで効果はある
実際にやってみることで学ぶことは多い
家族を大切にしようとする心情には効果的ではないか
家族を大切にしようとする心情の育成に大切ではないか
家族を大切にしようとする心情の育成に効果的
よくわからない


表4 「実践・体験」のデメリット
   
 
児童にとって     継続が難しい
実際に体験してみないとわからない
体験のみの体験になる可能性がある
継続しなければ意味はない
継続的な取り組みが難しい
実践・体験後の継続が難しい
 児童と家庭に
とって
家庭間の差
生活経験の差
様々な家庭生活の中で、具体的な思いが表現できない
実践し難い家庭環境の子もいるのではないか
家庭環境に配慮しなくてはいけないと思われる
家庭により協力の差や子どもへの関わりの差があり、心情面にも違いがある
家庭によっては、保護者からの感想を書いてもらえない児童もいる
「楽しかった」で終わってしまう可能性がある
家族構成によっては、つらい思いをする児童がいる
家族構成で配慮が必要な児童への対応
楽しかったで終わってしまう可能性がある
家族構成で配慮が必要な家庭の児童にとってはつらい
家庭の実態によって成果が大きく異なる可能性がある(家族などの理解がなければうまくいかないのではないか)
家庭の状況によっては実践・体験させることが難しい
家庭的に課題がある児童への配慮が必要
家庭生活があまりに違いすぎて理解できないこともある
子どもが表現するので個人の生活にふれすぎるかも
家庭環境による格差がある
家庭で実践してくる場合は家庭実態にばらつきがあり、より学習が必要な児童のほうが効果的な学習にならない場合がある
 教師にとって  家庭との連携
実践に対して、家庭が協力的であるとは限らない場合が考えられる
家庭等との連携が十分できるか不安である
家庭で実行する力にはつながりにくい
家庭との連携がとりにくい
家庭で協力が得られない児童がいる。学校で体験する場合、ミシン等用具が少ない
家庭での実践、体験ができにくい実態がある
授業時間外、家庭で実践することが多くなり、家庭の協力が得られないと実践できない
家庭での協力が全員得られるかどうか
時間不足
下準備に時間がかかる
準備に時間がかかる
教員の力だけでなく、地域や保護者の協力が必要。準備や打ち合わせなどにも時間が必要
実践についての準備・報告など、直接できにくいので工夫手順がいる
準備が大変
準備に非常に時間がかかる
シラバス等があり、時間数の確保が難しい
場の設定の時間確保
内容の精選をしないと、時間内での指導が難しい
時間的な問題
多様な活動を体験させたいとの思いはあるが、なかなか十分な準備ができない
 その他
事前の準備・計画をしっかり立てないと体験 → おもしろかったで終わってしまう
具体的な指導方法がわからない
生活の営みの意味を気付かせることの重要さが薄らぐ恐れがある
機会の設定、予算面で難しさがある
特に考えられない
特にない


<ロールプレイングについて>
メリットで目立つ意見としては、「相手の立場に立って考えることができる」という意見ですが、「授業形態が変わる」ことで授業改善につながるという意見もあります。

逆に、デメリットは、恥ずかしがったり、茶化したりして「うまくいかない」というレディネスに対する意見や、「オープンエンドになる」という定着の方法、「家庭事情へ配慮が必要」という家庭事情に対する配慮、「具体的な指導方法がわからない」といった様々な意見が述べられています。


<実践・体験について>
実際に現在もとくに「総合的な学習の時間の中でよく使われているということであった「実践・体験」という教育方法について、メリットとして挙げられているのは、表3に示したように、「どんな活動でも、自分で体験することでその意味をとらえ直したり、家族の思いを理解したりすることができる」、「家庭の力が弱い児童にも体験させてやることができる」というように、おおむね肯定的な意見が数としても多くなっています。

逆に、デメリットとして挙げられているのは、「家庭で実践してくる場合は家庭実態にばらつきがあり、より学習が必要な児童のほうが効果的な学習にならない場合がある」といった家庭の事情の問題、「準備に時間がかかる」という教員の負担の問題、「授業時間外、家庭で実践することが多くなり、家庭の協力が得られないと実践できない」といった家庭との連携の問題があります。
しかしながら、方法論として吟味をする必要性については記述されておらず、課題を克服するハードルは「ロールプレイング」に比べると低いのではないかと考えられます。


<まとめ>
表1〜4をならべてみると、「ロールプレイング」にデメリットが多く、課題を克服するハードルは「ロールプレイング」の方が高いことがこの自由記述からもわかります。

現在の指導要領下においても「ロールプレイング」は約2/3の教員が使用しているに過ぎず、今後この方法を使っていくことが効果的であるのか、「実践・体験」と比べても研究や検討が必要になってくると思われます。
その際、今回デメリットとして挙がっている課題をどのように克服していくことができるのかを検討することが教育方法としての定着に向けては欠かせないということがわかりました。

共通の課題である、教員の時間の確保の問題、家庭との連携の問題、家庭間の格差の問題を克服する手立てを考えつつ、比較するとより旗色が悪い「ロールプレイング」の「手法困難」を克服する研究が求められることがこの記述からも見えてきたといえます。


 4.「家庭生活を大切にする心情」について教員養成課程において学ぶべきもの
  4−1. 家庭科の「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ内容  


 
今後、小学校家庭科において、「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」という目標に向かって、大学の教員養成段階で学ぶべきか、について質問しています。
教員養成の段階で、家庭科の「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ内容について、重要な課題として学ぶべきだと思われますか。

1.まったくそう思う 2.ややそう思う
3.あまり思わない
4.まったく思わない
 


「家庭生活を大切にする心情」内容を教員養成段階で学ぶべきか
   
 
図28 ( 全体 ) 図29 ( 男女別 ) 図30 ( 年代別 )

結果は、図28のとおり、「まったくそう思う」と「ややそう思う」を足すと94%となり、ほぼ学ぶべきであるととらえていることがわかりました。

男女別においては、図29にあるように、「まったくそう思う」において、男性が上回っていることが読み取れます。
また、年代別においては、「まったくそう思う」が50代に相対的に多いのに対して、20代、30代においては、「あまり思わない」が相対的には多いという結果になっています。
いずれにしても、大方では「家庭生活を大切にする心情」の何を教えるのか、その内容について議論を重ね、教員養成教育に盛り込んでいく必要があるといえます。



【 4−2. 家庭科の「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ方法 】


「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」内容とは別に、「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」方法についても聞いています。
教員養成の段階で、家庭科の「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ方法について、具体的に学ぶべきだと思われますか。

1.まったくそう思う 2.ややそう思う
3.あまり思わない
4.まったく思わない


「家庭生活を大切にする心情」方法を教員養成段階で学ぶべきか
   
 
図31 ( 全体 ) 図32 ( 男女別 ) 図33 ( 年代別 )

結果として、内容については、「まったくそう思う」と「ややそう思う」を足すと94%であったのに対して、方法については、図31でみるように、足して90%と、やや少ないですがほぼ方法についても教員養成段階で学ぶべきであると答えていることがわかりました。

男女別でみると、図32にあるように、ほぼ男女は同様の傾向にありますが、やや男性において「あまり思わない」が多いです。
また、年代別でみると、図33にあるように、20代において「まったくそう思う」割合が少ないです。
このことは、内容についての結果とは違ったものになっています。
20代においては、方法論的には最新教育を受けてきており、上の世代より自身がニーズを抱えていないということでしょうか。




 5.小学校で「家庭生活を大切にする心情」をどうはぐくむか

冒頭でも述べたとおり、今回の調査においては、回収率が低いため、関心が高い層のみの回答を集約するという傾向になっていると思われます。

したがって、ほとんどの回答において、「家庭生活を大切にする心情」をはぐくむ内容や方法を吟味していくことに好意的でしたが、回答の無かった層の意見は必ずしも好意的であるとは限らないことを念頭に置きつつ、それでも現場の教員からは新しい内容についての情報が必要とされているといってよいのではないかと考えています。

今後、この内容と方法について吟味する際には、中学校段階ではすでに以前の指導要領から学ばれている内容や方法を準拠することが賢明であると考えられ、具体的には「ロールプレイング」と「実践・体験」という方法をいかに小学校段階に適した形にしていくか、という経路で研究を進めるべきであろうと考えます。

その際、本報告で明らかにされた教員からのデメリットと考えられる意見に耳を澄ませば、課題は以下の点に絞られることになります。
(1) 「ロールプレイング」に関して
先にも挙げましたが、「ロールプレイング」に対しては
@ レディネスをどう作るか、
A 定着をどう図るか、
B 家庭事情をどう配慮するか、
C 具体的な方法をどう組み立てて構造化するか
ということがあります。

(2) 「実践・体験」に関して
今後の課題は、
@ 家庭事情への配慮(「ロールプレイング」と同様)、
A 教員の時間確保、
B 家庭との連携(@とも重なる) 
という点です。

今後この二つの方法について効果的な教科法の研究が速やかに進められるべきですが、とりわけ「ロールプレイング」をどの小学校でも実施できるような簡単なマニュアルのような構造化された方法論を探る必要があります。

詳しくは、福山市立女子短期大学紀要 37号 正保正惠
「小学校家庭科で「家庭生活を大切にする心情」を育む教科法の研究(2)
― 福山市小学校教員の実態・認知・ニーズ ―」
にまとめています。

<謝辞>
本研究を進めるに当たり、福山市教育長高橋和男様はじめご協力いただきました
福山市内各小学校5,6年生担任の先生方には、改めて深謝いたします。












2009.5 香川県直島にて  
家庭科の脱ジェンダー化と「家庭生活を大切にする心情」

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