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香港の総合家族サービスセンターと美食科学

   香港は、中国広東省の南東の沿海地帯に位置する地域で、アヘン戦争以来150年間続いた英国領から、1997年中国に返還され、その後も世界の貿易の要所として発展し続けている。
おおよそ1100km2に690万人の人々がひしめく香港は、地震に見舞われたことがないということで、有名なシンフォニーオブライツのビル群をはじめ高層ビルが立ち並んで夜は「百万ドルの夜景」といわれる壮大なパノラマが見られる。

 
   
シンフォニーオブライツは、音もお届けしたいのですが・・・

 
 総合家庭サービスセンター 

 家族生活教育に関して、「子ども中心、家族に焦点化、コミュニティ単位基盤」("child-centered, family-focused and community-based")というコンセプトのもと、従来からある地域のネットワークを活用しつつ、総合家族サービスセンターが各地にあり、そこではグループワークを中心とした家族生活教育が行われている。
正保は、2011年福山市立女子短期大学(2012年3月閉学)正保研究室卒業生の涂永麗さんとともに、インタビューに赴いた。

 香港では、家族の福祉については「社会福利署」(Social Welfare Department=SWD)が担っており、各地にある総合家族センターを統括している。そのパンフレットには、以下の文章が添えられている。

 
   ■ 目標  
 
◎  家族の凝縮力を強める
家族の調和を促進する
個人および家族の問題を予防し、対応するのに協力する

 
   ■ 簡単な紹介  
   
総合家族サービスセンターは、新しいサービスの形態である。
「子ども中心、家族に焦点化、コミュニティ単位基盤」の方向で、サービスを行う。
多様な対応のしかたを使って、市民に対して予防、支援、救助がセットになった対応をしている。

センターは、地区団体、機構、仲間関係で親密な協力を行うために力を結集している。
また、地区の資源を運用し、多方面からの介入を通して、家庭の内在的な能力の発揮を促進し、家族関係の凝集力を高める。
さらに、個人や家族が協力し、様々な問題に対して有効な予防と対応を行う。

現在、香港全体で61か所、社会福祉省あるいは非政府機構がセンターを運営している。

 
    ■ サービス内容  
 
問い合わせサービス
資源コーナー
家族生活教育
親子活動
教育及びグループや活動プログラムについての開発 
訪問サービス 
ボランティアのトレーニングとサービス
相互サポートとグループ支援
カウンセリングサービス 
紹介サービス(以下のものを含む)
 
住宅 里親、子どもの家、高齢者ホーム
デイケア・リハビリサービス 幼稚園、保育園、デイ活動センター、シェルター
短時間ケア 短時間子ども預かり、放課後児童託児、女性保護センター
ホームケア 総合ホームケア、ホーム及びコミュニティ改善のケアサービス、家事指導サービス
経済的援助 総合社会保障援助計画に申請する援助、慈善信託基金 
心理サポート 
思いやりのあるふさわしいところに置くサポート(仕事、住居)
その他のサービス(SWDのみ)法律に基づく子どもや青少年の保護・管理

また、上記の家族生活教育に関して、家族生活教育資料センターが様々な資料、教材を作成している。
ここでは、その中の1冊「子どもを管理して教えるための基本法」の内容を紹介する。


子どもはあなたの愛を必要としている
子どもは、衣食住(交通)の世話が必要であるだけでなく、父母の愛が必要である。
父母の愛は子どもの成長の栄養素であり、親子関係を調和する基礎である。
父母の愛によって、子どもが暖かさと安全を感じられ、父母に対する尊敬及び他人への信用を養う。子どもの自重及び自尊は、まさにここから生み出される。
そうすれば、子どもも父母の教えを受け取りやすくなる。
「悪質」な溺愛はすべきではない
父母は、必ず「寵」と「愛」の区別ができないといけない。
子どもが必要なのは、「愛」で、溺愛ではない。
いつも寵=可愛がりすぎると、子どもを管理しにくくなって、さらに将来は人間関係の形成が難しくなる。
同様に、父母は、子どもは自分が生んで育てたという理由で、自分の好きなように子どもをコントロールし、自分の機嫌が悪い時に子どもにあたることもすべきではない。
期待しすぎは害になる
ひとりひとりの子どもは、いろんな先天的・後天的な成長の特質を持っている。
ゆえに、子どもの体質と知能はみな様々で違う。
父母は、子どもの特性を了解し、尊重すべきであり、双方のストレスと不安を避ける意味でも不適切な期待をすべきではない。
子どもが間違えたら、ゆっくり治す
人生は、一つの長い学習プロセスであり、その成功のもとは、ゆっくり積み重ねることである。
子どもがいろんなチャレンジを通して、失敗から正しいやり方をわかってくる。
ゆえに、父母はあまり焦らず、子どもにゆっくり粘り強く指導しよう。
 5 愚か者と言ってはいけない
人は皆自尊心があり、年齢長幼は関係ない。
自分の事を愛し尊重する人は、向上心をもつことができる。
父母がよく子どもに「愚か者、バカ、役立たず」というが、それは子どもの失敗、弱点を教えるのに過ぎない。
それは、大間違いである。
子どもから見ると、あれは、一回、また一回の侮辱で、それが積み重なったら、子どもは自分に対する自信を失っていき、自暴自棄に至る。
その時はもう修復できない傷になる。
絞めたり緩めたりは、害になる
父母は、同じ管理方法と態度をとるべきである。
朝と夕方で変わるのは、子どもが慣れることもできず、やがて父母は手も出せなくなる。
言ったり聞いたりする家族の愛もある 
緊密なコミュニケーションは、親子関係を深める。
父母は、子どもとたくさん接し、一緒に子どもの興味ある話題を討論し、子どもらの考えと気持ちを多く知り、子どもにも父母とのおしゃべりの楽しさを感じさせると同時に、父母も日常の会話の時に子どもに正しい考えを流し込む。
口を開けたらすぐ人を批判する親は、子どもを遠ざける。
 子どもの喜びと悲しみに注目する
子どもの考えと気持ちは大人よりまっすぐで素直である。
大人にとっては些細なことでも、子どもには戸惑ったり逆にすごくうれしいことと思われる。
ゆえに、父母は、子どもの情緒と気持ちを気にかけ、彼らが挫折あるいは失望の時に、励ましと支持をあたえることで、彼らは強くなる。
やがて立ち上がって彼らはうれしい時も一緒によろこびを分かち合うことができるようになる。
 子どもが無茶なことをさせないためにある程度の制限をする
子どもは父母の指導がどんどん必要となるが、自分をコントロールし規則を守ることを学んだら現実的な制限を受け入れるようになる。
そうすることで子どもが大人になった時に、少しずつ人との付き合いや環境に適応することができるようになり、好き放題しなくなる。
10  褒美をあげることと褒美で釣ることを区別する
褒美と励ましはともにとても良い子どもの管理方法である。
ただし、適切に使えるならば。子どもが精いっぱいあることを完成した時に、父母は褒めてあげるべきである。
子どもの成就を認め、子どもにさらに前進することを励ますこと、しかし事前に褒美で釣ることをしてはいけない。
もしかしたら、子どもは利益がないと動かない悪習が身に付き、逆に父母を自分の利益のためにコントロールしようとする。
11 心を込めて、道理を言うと、優秀な子どもが育てられる
子どもの理解力は、父母の助けの中から、ゆっくり訓練して生み出される。
父母は、日常で子どもに道理を教え、子どもに物事の是非を学習させ、そうすれば子どもは悪いことをしないで、しても責任をとり、改めるようになる。
子どもは一日も早く物事の黒白(是非)を区別できるようにすると、将来不良になる可能性が低くなる。
12 子どもの意見を採用してみたら
父母は子どもの年齢に応じて、物事を選択する。
子どもに参加させて自分の意見を述べて、そこから彼らの意思及び判断力を訓練する。
もし、父母が子どもの意見を採用したら、みんなはそれに従って行動し、みんなの一緒の決定に責任をとるべきである。
13  身を持ってルールを守れば、子どもは尊敬し愛してくれる
父母は、子どものおもな学習と真似する対象であり、だから父母の一言一語がよいモデルになり、そしたら子どもが信頼を置く。
言行不一致の父母は、子どもに不満を招く。親子の間の壁が厚くなる。


以上、涂さんと正保の共訳だが、このような子どものしつけルールが各センターでテキストとなって親教育が行われているのである。


 
 美食科学
 
正保らが香港を訪問した際、香港科学館は、「美食科学」展を開催していた。そこで目にしたのは、香港でも大人気の日本食についての称賛と、日本の食糧問題への警鐘であった。
 
 

美食科学のポスター
 
 
日本食は美味しくて、栄養価もあり、ヘルシーで世界中で愛されている。
が、写真にあるように、大豆は6%というのを筆頭に食糧自給率が極めて低い。
 
 

美味しいが自給してないことへの警鐘
 
 
さらに、日本は毎年1948万トンもの食料を廃棄しているという、世界的に見て不名誉な状態になっている。
この内容というのが、コンビニなどの弁当の売れ残り、レストランなどの食べ残しである。
 
 

イラストレーターのパフォーマンスに目が釘付け
 
 
突きつけられた課題を解決すべく、研究と教育を地道にしていこうと思う。 
 






2011.12. ビクトリアピーク in HongKong  



     
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